Q1:今月末で会社を辞めてほしいと言われました。どうしたらよいでしょうか。
A:解雇なのか退職勧奨なのか確認しましょう。
まず、解雇通知を受けたのか、それとも退職勧奨されただけなのか、使用者に確認して下さい。
解雇とは使用者側からの一方的な労働契約の解約です。これに対して退職勧奨は、労使双方の合意による労働契約解約を目指した、使用者側からの申込みです(あるいは使用者側が労働者による申込みを誘っているにすぎない場合もあります)。
このように解雇と退職勧奨は、全く別のものですから、対処方法も異なってきます。はっきりしない場合は、使用者側に対して、確認することが大切です。
Q2:会社に確認したところ、「解雇する」とのことでした。もうどうしようもないのでしょうか。
A:解雇するには合理的理由が必要です。まずは使用者に解雇理由を説明させましょう。
解雇は、使用者側からの一方的な労働契約解除ですが、解雇をするには合理的理由が必要になります。
労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められています。
従って、使用者に解雇理由を明らかにさせましょう。その際に、「リストラだから」とか「不況で苦しいから」という一般的・抽象的説明に終わらせないようにしましょう。具体的な理由を説明させましょう。例えば、勤務成績不良が理由だと言われた場合は、いつのどのようなことが勤務成績不良にあたるのか具体的に説明を求めましょう。
使用者による解雇理由の説明は記録に残るようにしましょう。場合によっては、使用者に配達証明付き内容証明郵便を送って解雇理由の説明を求め、使用者から郵便で回答してもらうのもよいでしょう。
このような解雇理由を明確にさせる過程で、解雇の合理的理由がないことが明らかになる場合があります。合理的理由といえるかどうか自分ではわからない場合には、行政や労働組合の労働相談窓口、弁護士などに相談してみましょう。
なお、使用者が説明した解雇理由に反論するために、出勤退勤の記録(タイムカード等)や休暇取得の記録(休暇届等)や業務記録(営業日報、週報、月報、スケジュール管理表、目標実績管理記録等)が有効に使える場合がありますので、これらのものの控えや写しを残すことができる場合は、普段から確保しておくことが必要です。
また、使用者は通常は就業規則に解雇事由や懲戒解雇事由を定めているので、普段から就業規則の写しを確保しておくことも大切です。使用者は就業規則を変更することがありますが、労働者としては変更後の就業規則だけでなく、変更前のものも確保しておくべきです(変更後のものが適用されない場合があるため)。
Q3:会社に確認したところ、まだ解雇ではなく退職勧奨だとのことでした。しかし今後もしつこく退職を迫ってきそうです。
A:退職勧奨に応じる義務はありません。
退職するかしないかはあくまで労働者本人の自由です。退職の意思がなければ退職届を書く必要は全くありません。
嫌がらせ、不利益の押しつけなどによる退職強要は本来許されないことです。そのような場合には、嫌がらせや不利益の内容を記録しましょう。退職強要をやめさせるための申し入れや交渉、裁判所での手続き(退職強要禁止仮処分の申立)を行う場合に、その記録が役に立つことがあります。
精神的に耐えられなくなる前に、行政や労働組合の相談窓口、弁護士などに相談しましょう。使用者から即答を求められても、労働者には即答する義務はありません。まずは「私にとっては重大な問題なので、持ち帰って家族や友人に相談します」と答えておきましょう。その上で、冷静に対策を考えましょう。
嫌がらせに耐えられずに退職届を書いてしまった場合でも、退職届を撤回したり、取り消したり、無効を主張したりすることができる場合があります。書いて提出してしまった退職届が不本意で何とかしたいという場合には、弁護士に相談してみて下さい。ただし、退職金をだまって受け取ると、退職届の取り消しができなくなることがありますので、注意しましょう。
Q4:仕事をしたのに使用者が賃金を支払ってくれません。どうしたらよいでしょうか。
A:労働基準法違反として労働基準監督署へ申告しましょう。
賃金は、原則としてその全額を支払わなければなりません(労基法24条1項)。給与所得税の源泉徴収、社会保険料の控除、財形貯蓄金の控除や、過半数労働組合(それがない場合は労働者の過半数を代表する者)との協定により一部を控除することは、例外的に許されます。この例外に該当しない以上は、原則どおり全額支払わなければなりません。支払わない場合は、労基法違反となります。この労基法違反には罰則が用意されています(労基法120条1号)。
従って、この労基法違反について、所轄の労働基準監督署に申告すると、労基署が使用者に対して調査して賃金支払いを勧告し、その結果賃金が支払われる場合があります。
ただし、労基署への申告は、文書ですることをお勧めします。また、その際に、未払賃金額算定の裏付けとなる資料(賃金規程、過去の給与明細書、辞令、労働時間記録、業務記録など)を添付すると、労基署に短時間で理解してもらうことができ、良いでしょう。
Q5:長時間残業することがあるのですが、どうにかならないのでしょうか。
A:労働基準監督署へ申告する方法があります。
残業を命ずるには、いわゆる36(サブロク)協定(労働基準法36条において締結を求められている協定のことです)を会社と従業員の代表とが締結し、これを労働基準監督署に届け出ることが絶対に必要です。
もし、会社が36協定を締結せずに、違法に長時間の残業を命じている場合には、労働基準監督署に申告し、調査をしてもらい、以後違法な残業命令を出さないように指導・監督をしてもらうことができます。36協定で合意された時間を超過して残業を命じている場合も同じです。
労働基準監督署には名前を明らかにして申告することが必要ですが、労働基準監督署が事業場に調査に入る際には、申告者の名前を秘匿してもらうこともできます。ただ、調査に入ること自体、申告があったことを使用者に知らしめることとなりますから、申告がなされたこと自体も秘匿して欲しい場合には、調査に着手するまでに時間を要することになります。なお、労働者ではなくても、例えばその家族が申告することもできます。